通信制高校(N高)のネットコースを選んだ息子、レポート提出はなんとか締切ギリギリでも回せていました。でも、どうしても避けて通れないのが「スクーリング」です。年に数日、実際に学校へ行き、対面で授業を受けなければならないこの日を、私たち親子は不安な気持ちで迎えることになりました。
この記事では、不登校経験・発達障害のある息子が、スクーリングをどう乗り越えたのか、当日までの準備、学校とのやり取り、そして3日間の記録を、できるだけ正直に書き残しておきたいと思います。同じように「自分はスクーリングに行けるだろうか」「うちの子は大丈夫だろうか」と不安を抱えている方に、少しでも参考になればうれしいです。
息子の背景

息子は小学校の途中から中学校と、長期にわたって不登校でした。学校に行くどころか、外に出ることすら嫌がる時期が長く続き、半分引きこもりのような状態です。発達障害(自閉症スペクトラム)と起立性調節障害の診断も受けています。
対人コミュニケーションが苦手で、慣れない人と会うと言葉が出てこずフリーズしてしまうことがよくあります。また動きが人よりかなり遅く、周りのスピードについていけません。集団行動そのものが苦手で、みんなと同じペースで動くことがとても疲れる、という特性もあります。
中学時代は、行けたとしても週1~2回、私が付き添って30分程度学校に顔を出すのがやっとでした。そんな息子にとって、全日制高校への進学は現実的ではなく、通信制高校を選んだのは自然な流れでした。ただ、通信制であっても年に数日のスクーリングは避けられません。「1人で行動すること」に強い不安がある息子にとって、スクーリングは最大のハードルでした。
入学時の期待と、入学後のギャップ
入学の際、私は中学時代の状況やスクーリングへの不安について、学校側に正直に相談していました。その時は「事前に相談してもらえれば、できる範囲で配慮します」という言葉をもらい、少し安心していたのを覚えています。
ところが、実際にスクーリングが近づいて改めて相談してみると、入学時に聞いていた印象とはずいぶん違う対応に感じられました。「配慮します」という言葉と、実際にスクーリング近くになって相談した時に返ってくる回答の間には、大きな違いがありました。
事前準備でぶつかった壁

スクーリングを控え、私は高校にいくつかの質問と相談をしました。ひとつは「保護者の付き添いが可能か」、もうひとつは、新しい場所への不安が強い息子のために、「事前に会場を下見させてもらえないか」ということです。しかし、どちらもあっけなく断られてしまいました。
授業内容にも不安がありました。「グループディスカッションを多く取り入れている」という授業形式は、コミュニケーションが苦手な息子にとって最も苦手な状況です。班ごとの話し合いや、席が向かい合う形式で話すことが必須になっている点は、大きなストレス要因です。
さらに戸惑ったのが、相談窓口によって回答が食い違っていたことです。
例えば、スクーリングの相談窓口からの回答は、「授業の途中で退出すると欠席扱いになる」と説明されました。一方、入学前に相談していた保健の先生からもスクーリング直前に連絡があり、「一時的な退出であれば、教室に戻れれば欠席にはならない」という説明でした。
意味としては「(トイレなど)一時的の退出をしても、すぐに戻れれば出席にはなる。退席が長時間になり、授業に参加してないと判断された場合欠席扱いになる」ということで内容的には矛盾していないのですが、ニュアンスがだいぶ異なりました。
しかもこの2つの回答は別々のタイミングで届いたため、学校内で認識が統一されていないのではないか、という印象を持ちました。保健の先生に以前別の方から回答をもらった旨伝えると、驚いて謝罪されていたので、共有もされていないようでした。
逆に、安心材料になる回答もありました。「例え一言も話せなかったとしても、それだけで単位を落とすことはない」こと、「キャンパス内に休むスペースがあり、体調不良のときはベッドで休むことができる」ことです。この点は正直、ありがたかったです。ただ全体としては、「配慮はゼロではないけれど、窓口によって言うことが違い、何を信じればいいのか分かりにくい」というのが、準備段階での率直な感想でした。
前日〜当日朝:不安のピーク
スクーリングが近づくにつれ、息子は「行きたくない」「途中で帰る」、さらには「死にたい」と口にするほど追い詰められていました。親としては、その言葉を聞くたびに胸が締めつけられどうしていいか分からなくなりました。「わかった、今回はやめておこうか」とも「不安なら一緒に付いていこうか」とも言えません。
当日、車で送っていく道中から、息子は「もういやだ」「やっぱり帰る」「無理」と繰り返し口にしていました。妹が良かれと思って「がんばって」と声をかけたのですが、それすらうっとうしく感じたようで、「うるさい、だまれ!」「しゃべるな!」と、普段は絶対言わないような言葉が飛び出しました。
会場のビルの前まで送り届けても、なかなか中に入れません。10分ほど押し問答が続きましたが、ちょうど他の生徒たちが登校していく流れに乗るような形で、なんとか建物の中へ入っていきました。エレベーターの扉が閉まると、一気に力が抜けました。送り出せた安堵と、この後息子は大丈夫かという不安が入り混じった瞬間でした。
ほとんどの生徒は1人で登校していましたが、中には我が家と同じように保護者とみられる大人や家族に付き添われている子もいました。そして全く同じように、入口付近で行くのをためらっていて、声をかけられて時間をかけて中に入っていく様子がありました。他の子たちも葛藤の中スクーリングに来ていて、保護者たちも心配しているんだというのが、なんだか勇気づけられるような気持ちでした。
スクーリング中、連絡なしの不安な時間
息子はスマホを持たせていたので、休憩時間になれば「大丈夫そう」「疲れる」「もう嫌だ」「ひま」など、何かしら連絡が来るだろうと思っていました。しかし、電話もラインも一切ありませんでした。「大きな問題があれば学校から連絡が来るはず」と自分に言い聞かせてはいたものの、本人からの連絡が一つもないことに、心配な気持ちはどんどん強くなっていきました。結局、何もできないまま、ただ迎えの時間を待つしかありませんでした。

3日間の記録
1日目
無事に帰ってきた息子は、予想していたよりも明るい顔をしていました。あまり根掘り葉掘り聞くのも良くないかなと思ったので、「疲れたでしょ?」としか声をかけられませんでした。「うん疲れた」といいつつも「同じ班が全員陰キャで助かった」という、なんとも斜め上の感想でした。思っていたよりもメンタルは削られていないようで、まずはほっとしました。
2日目
1日目終わって「もう行きたくない」となるのではと心配しましたが、本人の好きな科目がある日だったこともあり、思っていたよりすんなり登校していきました。1日目と同じくスクーリング中は一切連絡ありませんでしたが、最後までやりきって帰りました。ただ帰宅後は言葉少なで、かなり疲れている様子が見て取れました。
2日目も、本人の疲れを考えると根掘り葉掘り聞くのもためらわれたので、夕ご飯に息子の大好物のお刺身を準備してエール代わりにしました。
3日目
最終日、疲れもピークのなか、苦手な体育が3コマある日でした。登校する時点から「体育が連続で続くのがつらい、早退するかもしれない…」と言いながら家を出ていきました。スクーリング日数は最低必要時間で決められているので、早退してしまうとまた別の日程で改めて出席し直さなければならないはずです。どうしてもしんどかったら仕方ないけど、できるだけ頑張ってきてと送り出しました。
結論をいうと、なんとか最後まで出席することができました。早退したいと先生に相談してみたようですが、「早退すると、別の日程のスクーリングにまた一から参加し直さなければならない」という制約を先生からも伝えられて、悩んだ末に最後まで頑張ったとのことでした。
3日間を通しての感想
N高のスクーリングは、特に発達障害や不安の強い子などへの特性の配慮はなかったようです。事前に相談しても対応できないといわれるので、おそらく他の人も同様だと思います。ただ、息子がそんなにつらい思いをしなかったということは、話せない人に強制的にしゃべらせたり、追い詰めたりするような対応もなかったともいえます。
実際熱血漢の先生なんかだと、よかれと思った対応で本人が追い詰められてしまうというのがありがちですが、N高ではありませんでした。良くも悪くも自主性に任せ、その子なりの学びを促すというスタンスなのかと思います。
息子によると、先生によって声のかけ方やサポートの仕方が異なり、そのたびに戸惑ったようです。例えば、授業中の水分補給は、「自由にどうぞ」「一言断って」「基本的にNG」などそれぞれ違いました。健常の子であれば、「あ、この先生はそうなのね」で済むのですが、発達障害のある子にとってルールが曖昧だと混乱してしまうことがあります。これについては先生や学校が悪いとも思いませんし、ある程度の柔軟性は今後も持っていた方が良いと思うので、本人にも良い勉強になったのではないでしょうか。
息子が困ったのは、体調がしんどいなとか、分からないことを聞きたいなと思った時に、近くに先生がいなかったことでした。事前の説明では「サポートに付く先生がいる」と聞いていたのに、実際には授業を担当する先生が1人、多くても2人しかいなかったようです。
私が問い合わせた時には、「サポートする先生が周囲にいるので困ったら声をかけて。ただ1人に付きっ切りにはできません」という話でした。もちろん息子にマンツーマンで付いてくれるとは思っていませんが、声をかけやすい距離には誰かしらいるのだろうと思っていました。
ただこれは、私も教室内に何人いるかをしっかり確認していないので、「担任の先生以外にもいるんだな」と思い込んでしまったのが良くなかったです。思い込みで息子に伝えて、息子を混乱させてしまいました。
一方で、自分と似たタイプの生徒が周りに多かったことは、息子にとって気が楽な要素になっていたようです。
振り返りと保護者としての気持ち
3日間を終えて帰ってきた息子の顔を見たとき、思わず涙が出そうになりました。本当によく頑張ったと思います。
今回のスクーリングを通して感じたのは、学校に配慮を求めても、応じてもらえる部分には限界があるということです。N高は障害特性への配慮は明言しておりませんので、それはある意味仕方ないのでしょう。最終的には、本人の頑張りに委ねられる部分がとても大きい、というのが正直な実感でした。
これからスクーリングを控える保護者の方へ

学校に事前相談をしても、必ずしも希望通りの対応をしてもらえるとは限りません。また、窓口によって回答が違うことも実際にあります。特に生徒数が多かったり、発達障害の特性へサポートする体制をとっていない学校の場合は注意が必要です。そうしたこともあるのだと、あらかじめ心構えをしておくと、いざという時のショックが少し和らぐかもしれません。
それでも、「話せなくても単位に影響しない」「体調不良のときは休める」といった、最低限の配慮については、事前にしっかり確認しておく価値はあります。
そしてもうひとつ、今回の経験を通して強く感じたのは、通信制高校選びの段階での確認の大切さです。ひとくちに通信制高校といっても、対応は学校によって大きく差があります。入学前に相談した内容と、入学後の実際の対応にギャップが生じることも珍しくありません。もし可能であれば、学校を選ぶ段階で、スクーリングでの配慮の実績や、相談窓口同士の連携体制についても確認しておくことをおすすめします。
何が起きるか分からない不安を抱えたまま迎えた3日間でしたが、子どもは子どもなりのペースで、それを乗り越えていってくれました。同じように不安な気持ちで日々を過ごしている保護者の方に、この記録が少しでも希望になればと思います。

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